川の深さは
福井晴敏『川の深さは』を読む。
『亡国のイージス』に始まり『Twelve Y.O.』を更に遡って、またもや語られる前日譚は既に言うまでもなくツボに嵌まりまくり。一読、明白であるように、三作に通底するモチーフは愚直なまでに揺るぎなく、変奏も気が利いていて、虚構を構造として楽しむことができる向きにはこたえられない仕掛け。加筆修正が為されていることを考えても、これを受け入れることが出来なかった江戸川乱歩賞選考委員の器量は重ねて問われるべきだろう。「サンスイ新聞」が出てくる思想的背景を割り引いて、なおファンであると言わなければならない。
Published on: 2000/9/2
Categories: 本