キングダム・オブ・ヘブン
『キングダム・オブ・ヘブン』を観る。145分の長尺ながら、ハッティンの戦いを軽く飛ばして戦略目標の明確な終盤のエルサレム攻城戦に焦点をあわせた脚本の手際は良く、見所は天地を分けて構えたサラセン陣営からの投石に始まる戦闘シーンに限らない。サラディンをサラディンらしく描いている点も好ましく、派手な脚色はもちろんあるとはいえ、題材を第三次十字軍ではなくその前段に求めたセンスは秀逸。リーアム・ニーソンが父であり領主であり、病を得て顔を隠したボードワン4世をエドワード・ノートンが演じていたり、全体的に助演が豪勢なのはうれしいが、オーランド・ブルームが『パイレーツ・オブ・カリビアン』と同じく何故かやたらと強い鍛冶屋として主演をはっていて、“I am the blacksmith.”という決めゼリフも健在とあっては、ジョニー・デップの出番がないことだけが悔やまれる。というか、パロディなのか、これは。
そんなわけで芯の方はかなり明快な復権の物語と割り切られていて、賢人は人の倫を説き、悪人は愚かであって悪役に徹し、陰謀やら裏切りで間をもたそうという小細工もないので、こちらとしても気持ちよく楽しめたのである。
Published on: 2005/10/16
Categories: 映画