硫黄島からの手紙
『硫黄島からの手紙』を観る。硫黄島守備隊の末路を一般的な日本人のそれを越えたレベルの見識に基づき描いており、『TOKYO DRIFT』とはえらい違いである。日本軍の地下陣地がほとんど塹壕と同じ感覚で作られたような描写になっているとか、栗林中将やバロン西の最期を創造しているとか、感傷的な音楽が耳につくとか、いくつか気になる点がないわけではないが、全体として丁寧な作りであり、二宮君に地獄巡りをさせる脚本の意図は明確。唐突に噴進砲が登場したり、考証も愚直なほどしっかりとしているようである。難を言えば役者の重厚感で、ラストの二宮君の笑みはちょっといただけないと思わざるを得ないのだが、爆撃を受ける擂鉢山の遠景など印象的なシーンもあったりして大作なりの見応えのある内容となっている。アメリカ本国での興業的な成功など望むべくもない映画だが、これはやはり一粒で二度美味しいという目論見よりは、クリント・イーストウッドの深いバランス感覚と考えて感心したい。
Published on: 2007/4/22
Categories: 映画