単純な場所

sophisticated girl; plain space

傷だらけの天使

『傷だらけの天使』を読む。サブタイトルは『魔都に天使のハンマーを』とあって、矢作俊彦というビックネームの手になるものであるにもかかわらず、往時の流儀に沿ったこの命名は、小説が33年ぶりの第27話であることを宣言している。当然のことながら。亨の死で終わった第26話を反芻しつつ(そこには人間の記憶と同程度の誤差はあるのだが)シリーズそのもの、しかもその三十数年後というキャラクタを造形し得ており違和感ない。矢作が唾棄していたはずの「毎朝新聞」の類いが使われているのも、オリジナルシリーズのパワーと考えてうかうかと納得してしまう。その長すぎる不在を除けば、よくできた後日譚であり、理に落ちているという気さえするほどなのだが、この種のオマージュをここまであからさまに表明する芸風だったかと、そこばかりはちょっと気にかかるのである。ちょうど木暮修が再会した綾部貴子に感じた違和感に似て。

Published on: 2008/8/16

Categories: 本