ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を観る。原作は1927年の『石油!』だが、オイル、あるいはカルトにまつわる人間の営みは何十年後だろうが変わらず、父と子についても然り。ダニエル・デイ・ルイスは、蟹江敬三みたいな押し出しによるアクの強い演技もさることながら、細部の表現力で物語を引っ張っている。そのラスト、
I’m finished.
という、どちらかというと一仕事終えたという口調、その背中は、状況と背反することで物語の構造を示している。「欲望と言う名の黒い血が彼を《怪物》に変えていく…。」というのが公開時の惹句だが、明らかに、これはそのような話ではない。ダニエル(役名もダニエルだ)に付帯しているのは、欲望という言葉で表現される属性では、どうやらないのである。劇中の不穏なBGMもなかなかのものだが、エンドロールまで音楽で聴かせるので緊張感が途切れない。160分近く尺があったりして、腹に重い映画である。
Published on: 2008/8/23
Categories: 映画