ブルックリン
『ブルックリン』を観る。1950年代、アイルランドからニューヨークに移住した娘が祖国に母と姉を残しホームシックに苛まれながらも、イタリア系の男性と出会ってやがてかの国を故郷と思い定めて生きていくという話。事件はないけれど人生はあるという種類の映画で、シアーシャ・ローナンが主演してアカデミー賞の主演女優賞に初めてノミネートされている。まだ20歳そこそこで、もちろん以前からその透明感が持ち味で『ハンナ』も素晴らしかったけれど、この作品では急激に存在感を増した印象があり、既に大女優の風格があって、ケイト・ウィンスレットあたりを継ぐ存在になるのではあるまいか。
コルム・トービンの原作をもとにニック・ホーンビィが脚本を書いていて、派手ではないけれど細部まで行き届いた話になっていて、アメリカという国を作った移民や繰り返し大西洋を渡る人びとの生活を背景に感じさせる立体感もうまく出ている。製作はハリウッドではなく、アイルランド・イギリス・カナダとなっていて、海の反対側で作られたこういう映画をドナルド・トランプの時代に観るというのも感慨深い。
ドーナル・グリーソンも顔を出していて、そういえばアイルランドはいい役者を輩出している土地でもある。
Published on: 2017/3/4
Categories: 映画