政商
愚かしいことだ。全く愚かしいことだ。
北朝鮮がミサイルを発射したのを好機とばかり、自前の偵察衛星を持つべきだ、TMD 構想を推進すべきだとの意見が台頭してきたようだ。さても短絡的なことに。情報網は自前で持つことが必要で、軍略は米国に組み込まれてよしとする矛盾はおくとして、今そこにある危機を絵空事の防衛システムの認知に利用しようとする政治センス、一方で効果的な対応を示すことが出来ない無能は二つながら罪万死に値する。
特に TMD 構想に関する動きには、今や死語かと思われた「軍産複合体」という言葉を想起せずにはいられない。戦略的にナンセンス、商売的には美味し過ぎるこれを、まさにどさくさ紛れ、済し崩しに進めてしまおうとは。そもそも今から十年後、数十兆円の費用をかけ、隣国から飛来したあるいは核ミサイルを、高空で破壊して致死量の核物質を撒き散らす戦術が確立したとして、これは軍事的な、あるいは経済的な、何より政治的な敗北以外の何だろう? 一体、弾丸で弾丸を撃ち落とそうとするが如き愚を夢想する以前、真っ当な戦術家なら発射基地を根刮ぎ破壊しようとするだろうが、真に優れた戦略家はそもそも発射基地を持たせない策をめぐらすだろう。KEDO による試みを主体的に先導することさえ出来ない政治家が、あるいはマスコミが憂国を装って特定権益を代表する醜悪な場面がまたも繰り返されている。
Published on: 1998/9/2
Categories: 日々