独りよがり
野崎六助はつまらねぇことを書く奴だとつねづね思っていたが、先日の朝日新聞にまたも書き飛ばしたようなコラムを載せていて、その物云いが妙に腹立たしい。
『羊たちの沈黙』が優れたサイコスリーラーだとして、別に異を唱えるつもりはないが、「その証拠に」作者のトマス・ハリスがそれを越える作品を書けずにいるとくれば、お前は何様だと突っ込みたくもなる。トマス・ハリスが極端に寡作なのは有名な話だ。数十年のキャリアで発表されている長編が三作というこの作家が、『羊たちの沈黙』の後、それこそ沈黙しているからといって、前作を越える作品を書けずにるからだとは?一体、何を理由にしての決めつけだろう、創作上の悩みについて相談を受けているとは、まぁ、ありそうにない話だ。
『ウロボロスの基礎論』で作中、「田中幸一」の評論に野崎の『そのバカバカしいまでの「独りよがり」に私は心底嫌悪を覚えてしまった』という一節があるのだが、これには深く頷いた。
Published on: 1998/9/8
Categories: 日々