父親たちの星条旗
『父親たちの星条旗』を観る。物語はあの地とこの地をカットバックで繋ぎつつ進行する重層構造をもつが、個々のシークエンスはよく研がれており無駄がない。上陸作戦開始以前のエピソードにより、軍は兵士を見捨てないという、いわば米軍における神話をあっさりと砕いてみせ(So much for “no man left behind.”)その後の展開も抑制的でありながら仮借なく、戦時における欺瞞を表裏から何層にもわたって剥いでいく。『硫黄島からの手紙』と同様、様々な経緯は伝えられる事実と異なり組み立てられたものであるが、テーマは奥行きのあるものであり、節度ある演出で語られているので、観る側の背筋も自ずから正される良作である。
Published on: 2007/5/4
Categories: 映画