敬愛なるベートーヴェン
『敬愛なるベートーヴェン』を観る。第九の初演をベートーヴェン自身が指揮するという架空のエピソードを題材として、なかなかに見応えのある作品となっている。「敬愛なる」などという誤用を冠されたせいでちょっと頭が悪そうな印象を与える邦題が悔やまれるほどだ。作曲家を志す写譜師の女性を主人公に据えていることで、原題の”COPYING BEETHOVEN”は深みを感じさせるタイトルであるにもかかわらず。エド・ハリスのベートーヴェンはかなりの熱演であり、当然のことながら音楽的にも分厚い上、いろいろと手の込んだ映像もあって、クラッシック音楽に興味がなくても飽きることはないだろう。山場である第九の解釈はかなり現代的であろうと考えられるし、大フーガの評価での挫折と後世における復権をクライマックスに配すあたり、議論不要の天才を題材にしながら大衆向けにおもねようという計算高いところもあって、そうした意味でも観やすい。
Published on: 2007/12/2
Categories: 映画