単純な場所

sophisticated girl; plain space

クラッシュ

『クラッシュ』を観る。運命の交差を知るのは観客ばかり、という群像劇であり、主要なテーマは人種差別ともみえるがそれだけではない。『トラフィック』ばりに手の込んだ脚本はあからさまにオスカーを狙いにいったのだと思えなくもないにして(何というか、拵えが目につきすぎる)人の死によって話を転がそうという種類の性急さがないところには好感がもてる。事件は表象の一つに過ぎず、無数の出来事が糾える縄のごとくそれに連なっている構造の開示は、映画表現の蘊奥であって映画的快楽の拠るところである。俳優陣がまた豪華かつ微妙にシブいのだが、担う役割はそれぞれがかなりステレオタイプで、難といえばそのあたりか。

Published on: 2006/11/25

Categories: 映画