単純な場所

sophisticated girl; plain space

ラストマイル

『ラストマイル』を観る。野木亜紀子の脚本による『アンナチュラル』や『MIU404』とのシェアードユニバースムービーという触れ込みで、もちろん塚原組の仕事とあれば観る前から満足しているようなところがある。心配といえば、爆発シーンの表現が難しいということを『MIU404』で学習済みであるにもかかわらず題材が爆弾事件というところなのだが、まぁ、これはこれで持ち味というか。もちろん、爆弾そのものは社会的な搾取の構造を告発しようという本作のテーマにはかかわりがないことでもあるし。

誰もがAmazon配送センターを連想する米系通販サイトのロジスティックセンターを舞台として、人間性を排除していくGAFA的な論理を俎上に上げて、ヤマト運輸の残業代未払い問題や総合家電メーカーの斜陽までも立体的にストーリーに織り込む手際は紛れもなく野木亜紀子の仕事で、しわ寄せを受ける側に立つという点では一連の作品と正しく世界観を共有する映画になっている。アメリカ企業の強引ややり口だけでなく、本社が仕事をしない日本企業のステレオタイプを取りこぼさないあたりがうまいのである。

もちろん『アンナチュラル』と『MIU404』のキャラクターを塩梅よく登場させているのは見どころとして、『MIU404』の虚偽通報事件のエピソードから当時の高校生が今では陣馬のバディとして機捜にいるというのもクロスオーバー設定の醍醐味であろう。火野正平の最晩年の出演作ということになると思うのだけれど、どこか遺言のようなセリフがある。RIP.

Published on: 2025/5/4

Categories: 映画